第4回 「太陽観測最前線 -
『ひので』が見た太陽の姿」
太陽はまさしく太陽系の中心に位置する恒星で、地球上に住む我々人間も太陽が放出するエネルギーの恩恵を受けて生きています。では、我々は太陽のことをどれくらい理解しているのでしょうか。太陽は他の恒星と比較すると圧倒的に近くにあり、地球から表面を詳しく観測できる唯一の恒星です。しかし、まだまだ分からないことも多くあります。太陽の希薄な外層大気コロナはなぜ100万度を超える超高温になっているのか? 巨大な爆発現象フレアはどうして発生するのか? そもそも太陽表面にある強い磁場はどのようにできるのか?
太陽を観測することはもちろん地上からでもできますが、地球を覆う厚い大気のせいで不自由な観測を強いられてしまいます。それはちょうど海の底から空を見上げているようなものです。一部の光しか海の底には届かないし、届く光も海の中だとゆらゆらと揺れてしまいます。この状況を打開するためには、大気の外、宇宙から観測するのが最も効果的な方法です。365日24時間連続して観測することができる人工衛星の登場によって、太陽の研究は飛躍的に進歩しました。1990年代以降、日本の「ようこう」、アメリカ、ヨーロッパの「SOHO」や「TRACE」といった太陽観測専門の人工衛星が次々と打ち上げられ、様々な波長で太陽を常時観測するようになり、上記の謎が少しずつ明らかになりつつあります。
「ひので」衛星の外観図(©国立天文台)
そのような中、日本も新しい太陽観測衛星「ひので」を2006年9月に打ち上げました。「ひので」衛星の最大の特徴は、世界最大の太陽観測用宇宙望遠鏡を搭載していることです。これは、より細かな構造まで見ることができることを意味しています。言うならば、太陽の表面を詳しく調べるための「顕微鏡」ともいえる観測装置です。太陽の表面を拡大して見てみると、黒点やその周囲には微細な構造が無数に存在し、それが絶えず変化していることが分かります。この小さな構造の変化が表面で発生する現象の鍵を握っているのです。
太陽の表面は、実は強力な磁場で覆われています。最も強力な磁場が存在する黒点では、磁場の強さは3,000ガウス(ガウスは磁場の強さを測る単位)にもなります。詳しく観測すると、黒点の外でも1,000ガウスを超える小さな磁場構造が無数に存在していることが分かります。ご存知のように、地球にも磁場(地磁気)が存在しますが、その強さは0.3ガウス程度しかありません。ですので、太陽には地球の1万倍にもなる磁場が存在していることになります。もう一つの特徴は、その磁場の様子が刻一刻と絶えず変化し続けていることです。太陽内部から湧き上がってきたり、動いたり、消滅したりを繰り返しています。「ひので」は磁場の時間変化をつぶさに観測できる観測装置なのです。

「ひので」がとらえた太陽黒点の微細構造(©国立天文台)
強力な磁場は、太陽の表面で様々な現象を引き起こします。特に黒点の周辺では、強力な磁場が存在することによって、大小様々な爆発現象が絶えず発生しています。これは蓄積された磁場のエネルギーが急激に解放されるために発生するものです。爆発現象が発生すると、太陽表層の物質をはるか上空へと噴出します。その高さは地球1個を容易にのみこんでしまうほど大きくなります。巨大な爆発になると太陽の重力をも振り切って、惑星間空間へと物質を放出します。「ひので」はダイナミックに変化する太陽の様子を詳しく観測することができます。

「ひので」がとらえた黒点周囲で発生した噴出現象(©国立天文台)
2007年9月でちょうど1歳になった「ひので」は、目の覚めるような太陽の姿を我々にもたらし続けてくれています。今後も新しい発見をご期待下さい。

